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「カイロプラクティックたんぽぽ」院長のブログです

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日本人の腰痛には、心理社会的要因が強く関与しているという報告がされているようです。
また、記事中にあるように、新しい腰痛の概念として『生物・心理・社会的疼痛症候群』を提唱しているようです。つまり、画像上に問題があるか、ないかだけではなくて、ストレスや抑うつ、過度な仕事、運動習慣なども含めた要因から腰痛をとらえましょうということですね。そして、痛みと快感を制御するオピオイド・ドパミンシステムによって、この理由が説明できるとも指摘されています。
これで、画像による評価に偏重していた腰痛診断にも、新たな流れが生まれてくるといいですね。


第82回日本整形外科学会
腰痛と生活習慣関連因子との相関が明らかに

 高齢化社会が進むなか,腰痛の早期発見・予防対策の構築の重要性が指摘されている。第82回日本整形外科学会のシンポジウム「生活習慣病と腰痛-早期予防・早期対策に向けて-」〔座長=慶友整形外科病院(群馬県)・平林洌名誉病院長,山口大学大学院整形外科学・田口敏彦教授〕では,大規模疫学調査結果から見た腰痛の危険因子や生活習慣要因および心理社会的要因と腰痛との関連性について報告された。

~大規模住民コホート調査ROAD~
腰痛有病率と危険因子が明らかに
 東京大学22世紀医療センター・関節疾患総合研究講座の吉村典子特任准教授らは,2005年,わが国の3地域(東京都市部,和歌山県山村および漁村)の骨関節疾患患者を対象とし た大規模住民コホート調査ROAD(Research on Osteoarthritis Against Disability)を開始した。今回は,ベースライン調査の解析結果から,地域住民における腰痛の疫学的指標と危険因子について報告し,「日本の腰痛自覚者数は推定で1,580万人であり,危険因子は年齢,性,BMI,X線診断でKellgren/Lawrence(KL)2度以上である」と述べた。

推定腰痛有病者数は1,580万人
 対象は,ROAD参加者3,040例(平均年齢70.3歳,女性65.1%)のうち,腰痛を含む関節痛の有無に関して整形外科医の診察を受けた2,987例(男性1,041例,女性1,937例)。腰痛の定義は,医師による問診で過去1か月間に持続的な痛みを自覚した場合,または現在,腰痛を自覚している場合として腰痛の有病率を推定。さらに,腰痛の有無と生活習慣やX線撮影の結果との関連性を検討した。

 その結果,腰痛の有病率を年代別に見ると,総数では40歳未満,40歳代,50歳代,60歳代,70歳代,80歳以上の順に20%,24%,36%,25%,30%,32%と年齢が上がるにつれて高くなる傾向が見られたが, 性別に見ると,男性では40歳代,女性では40歳未満で1つのピークがあり,その後いったん下降して,また年齢とともに上昇する2峰性のパターンが認められた(図)。この有病率を2005年の日本人口に当てはめて,全国の腰痛自覚者数を推定したところ,総数で1,580万人(男性570万人,女性1,010万人)となった。


 腰痛の危険因子としては,年齢,性,BMI,KL grade 2度以上が挙げられた。腰痛の有無を目的変数とし,性および年齢を調整したロジスティック回帰分析ではBMI〔オッズ比(OR)1.03〕およびKL 2度以上(同1.38)が腰痛に有意に関連する因子であった。

 以上から,吉村特任准教授は「高齢化社会を迎えるなかで腰痛予防は重要な課題となる。今後もさらなる調査・解析を進めたい」と結んだ。

勤労者の腰痛と生活習慣要因に関連性
 産業医科大学整形外科の中村英一郎氏は,勤労者および高齢者の腰痛に関連する生活習慣要因を検討した疫学調査と,生活習慣改善の効果を検討したランダム化比較試験(RCT)などの結果を報告し,「勤労者の腰痛には生活習慣要因が関連する」と結論付けた。

座位作業者でより強く関連
 疫学(横断)調査の対象は,某企業における16~65歳の勤労者4万7,613人(男性3万9,619人,女性7,994人)。多変量解析の結果,女性,作業姿勢,BMI,喫煙,睡眠時間,運動習慣が腰痛に関連する有意な因子であった。なかでも睡眠時間が1日4時間未満の群のORは2.3。また,BMIが25未満かつ運動習慣を有する群に対して,BMIが30以上かつ運動習慣がない群では腰痛有訴率が高いことが示された(OR 1.67)。

 さらに勤務形態別の検討から,設計や事務系など座位作業者の腰痛には座位という姿勢要素ばかりでなく生活習慣の良悪が腰痛の有無に強く反映され,一方,工場内勤務でかなりの動作がある作業者では,勤務時間内での作業が腰痛に影響を与えていることがわかった。

 中村氏は,勤労者における生活習慣に関連性のある腰痛の存在を指摘し,「前者は生活習慣関連性のdisuse type,後者はoveruse typeの腰痛である」と述べた。

 また,50歳以上の高齢者2,868例(男性584例,女性2,284例)を対象に,腰痛の関連因子を検討したところ,女性,飲酒歴,喫煙歴,骨粗鬆症が浮かび上がった。しかし,75歳以上では女性と骨粗鬆症のみが関連し,生活習慣要因との関連性は認められなかったことから,同氏は「関連因子が変化する世代別のサブカテゴリーごとに,今後の対策を考えなければならない」と強調した。

生活習慣改善によりQOLが向上
 中村氏らは,BMI 25以上の肥満かつ腰痛がある男性従業員44例を対象に,腰痛軽減およびQOL改善効果を検討するRCTを実施した。対象を介入群(23例)と非介入群(21例)にランダムに割り付け,介入群では自己記入式体重測定と腹筋,臀筋運動各20回×2を毎日実施・記録するよう指導した。調査項目はBMI,腹囲,visual analogue scale(VAS),MOS Short-Form 36-Item Health Survey(SF-36)とした。

 その結果,2か月後に介入群では,すべての調査項目と全体的健康感,活力および社会生活機能の改善が認められた(図)。そのため,減量と運動という介入が腰痛を軽減し,QOLを改善することが示された。


 また,健診時にCTによる臍部高位での腹部内臓脂肪面積測定を希望した5,039人を対象に,腹部CT画像を用いて大腰筋・傍脊柱筋・内臓および皮下脂肪面積を測定。これらの因子が腰痛の有訴率と相関するかどうかを調査した結果,大腰筋面積のみが有意に腰痛有訴率と相関していた(OR 1.4)。

 以上から,同氏は「勤労者の腰痛には外部環境および遺伝的要因とともに生活習慣要因が関連することが示され,特に,座位作業者などに多いdisuse typeの腰痛は生活習慣性の腰痛と言えるだろう。また,生活習慣の改善は勤労者の腰痛およびQOL改善に有効である」と結んだ。

腰痛に心理社会的要因が強く関与
 福島医科大学整形外科の紺野愼一教授は,成人4,500人を対象とした質問票調査から,日本人の腰痛には心理社会的要因が強く関与していることを報告。この関連性はドパミンシステムによって説明できると,その機序を解説した。

ドパミンシステムによって説明
 紺野教授らは,層化二段無作為抽出法で選出した全国の成人4,500人を対象に,腰痛に関する質問票調査を実施した。腰痛はL2,L3から臀部にかけた痛み,かつ過去1か月間に24時間以上続く痛みを腰痛と定義。VAS,年齢・職業などの個人属性,腰痛特異的QOL〔Roland Morris Disability Questionnaire(RDQ)日本語版〕,包括的健康関連QOL〔SF-36,Japanese Perceived Stress Scale(JPSS)〕,心理社会的要因に関する項目について調査した。

 その結果,痛みとは独立してRDQが著しく高い群の特徴として,ストレス,抑うつ,過度な仕事,仕事に対する満足度が低い,同僚との関係不良が挙げられた。腰痛の危険因子は,年齢,家族歴,喫煙,運動あり,職業あり,自覚ストレス,うつ度,職業関連身体負荷であった。以上から,同教授は「日本人の腰痛には心理社会的要因が強く関連することが判明した」と述べた。

 2008年,同科の菊地臣一氏(現・同大学理事長兼学長)は,新しい腰痛の概念として『生物・心理・社会的疼痛症候群』を提唱した。無症状例と比べて,椎間板ヘルニア手術が適応とされる重症例では,神経根の被圧迫度とともに,仕事上のストレスや満足度,不安や抑うつなどの精神要因にも大きな差があるとされる。

 では,なぜ腰痛に心理社会的要因が関与するのだろうか―。紺野教授は,痛みと快感を制御するオピオイド・ドパミンシステムによって,この理由が説明できると指摘。これにはシステムを構成するphasicドパミンとtonicドパミンが重要な役割を担っている。つまり,tonicドパミンが正常状態下で痛み刺激があるとphasicドパミンが放出され,オピオイドが放出されるため痛みが抑制される。一方,ストレスやうつ,不安状態では多くのtonicドパミンが放出されているため,痛み刺激を加えてもphasicドパミンは放出されず,痛みが抑制されないという機序だ。一般に,慢性腰痛やストレス,不安,うつ状態,線維筋痛症では,このtonicドパミンが多く放出されているという。

 以上をまとめ,同教授は「腰痛には心理社会的因子が明らかに関与しており,この関連性はドパミンシステムによって説明できる」と結んだ。
[Medical Tribune 2009年7月9日(VOL.42 NO.28) p.28]

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